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遺書
「俺に何を求めているの?」 そう問いかけた男に私は、きょとんとした目で返事を返すことが出来なかった。そして半ば呆れられながら眠る男の腕の中で気がついたのだ。何を彼に求めているのか。人が求める究極の仕合せの至り。そこに行き着ける人間は極僅かであるが、その至福に辿り着いた女は一体、何を考えていたのか。究極の幸せを得た女の結末。

2007年1月30日、正午、逝去。

報道陣各位
どうぞ、誤った報道だけはされませぬよう、本件報道の折りにはご注意くださいませ。世ではこれを殺人と呼びますが、自身にとっては切なる願いの実現に他なりません。ですので、どうか報道の際にはこの遺書全文の公開を強く、希望致します。そして、1人でも彼を責める人が減りますよう、ご協力を賜れましたならば、真に幸甚で御座います。自らが希望した死でございます。事実は他殺と記載されましょうが、真意は自殺です。脅かされたわけでも、何でも御座いません。ですから私は、こうしてすらすらと最期の筆が執れるわけです。


ハロゲンヒーターの明かりを頼りに、この書を書いております。先ずは私の究極の願い、それは貴方でこの生涯を終える事に有るのですから、後悔は全く御座いません。否、私は幸せの絶頂で逝くことができるのですから、寧ろ、幸せな人間なのです。鼾をかきながら眠りに就いている貴方を背にこの書を描けている今も既に幸せですが、これ以上の幸せが待っているのですから、私は最早悔やむことなど何一つ御座いません。
遺言とは如何にして書くのでしょうか。私にはその知恵が全く御座いませんで、思いつくままをこう、つらつらと書き連ねさせていただきたく存じます。

1つ、私が死亡すると最高で1千万円、社から支払われますので半額は愛する貴方の将来にお役立て下さいまし。そして残り半分は文学を志している同志たちのためにお使い下さいませ。

1つ、私が愛用しておりました万年筆は、棺桶と一緒にお納め下さい。その際、原稿用紙も溢れるほどに入れてくださいましね。あの世へ参りましたならば、膨大な時間をこの寂しがりの私が如何にして過ごしましょう。ですので、これだけは、何卒お願い致しますね。

1つ、社のみなさまには大変申し訳なかったと、心から詫びていた。その
旨、お伝え下さいまし。私は彼らの恩を仇で返すことになるのですから。

1つ、京阪宇治駅前に骨董屋がございます。その店のご亭主と奥方様には「御義父ちゃん、しずかおばちゃん、先逝く私をどうぞお許し下さい。願わくば、いつか信楽焼きの真っ白な茶碗を墓前に供えてください」と。

1つ、目黒の家は一通り片付けましたが、万が一、不具合が有り、お金が掛かるようでしたら、真にお手数ですが、貴方の家の冷蔵庫下に貯金凡てを下ろして御座いますので、そこからお願いできますか。もし、何もなければそれは世のために使って下さい。使い方は貴方にお任せ致します。

最期に、貴方へ。
人の為と書いて偽と読みます。どうぞ、逃げることなく、悔い無き人生を。また、優しさの意味を真に理解出来るような男性になられますよう。そして、時として、その場で決断する勇気も必要となるでしょう。そのときは、理由は考えずに貴方の直感を信じてください。生前、口に出して云えませんでしたが、貴方を心から、愛しています。
月並みですが、短いながらも貴方と出逢ってからのこの数ヵ月、本当に私は幸せでした。勿論、苦しみ悩んだことも幸せの分、御座いました。しかし貴方にいつも、支えられて参りました。
本書は、正式なる遺言とは程遠いものなのかもしれませんが、私はこの25年間を悔いなく生き、悔いなく去れるのです。こんなすばらしい死に様が他にどうしてございましょうか。それを書き残し、また僅かに残った精算と願いをここに記します。私の死を決して嘆かず、いつも通りの冗談で笑い飛ばしてやってください。我儘な女の、本当に最期の我儘です。

本書に我願いの凡てを書き残し又本書を最愛なる貴殿へ、本日本書に託し候。

                                           2007年1月29日
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[2007/02/18 12:32 ] | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0)
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