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シェルフに掛かっている大きなYシャツを抱きしめた。
几帳面な男の癖がよく表れており、
使用済みながらもきっちり四つ折にされたハンカチは、
胸ポケットに収納されていた。
同じく靴下も左右そろえてハンガーに掛かっている。
中に着ていたアンダーウェアのTシャツから、男の匂いがした。

急な吐き気に襲われ、トイレに顔を突っ伏し顔を上げると、
そこには、仲良さそうに寄り添う紺色と桃色の歯ブラシが
コップの中に存在している。

意味もなく泣けてきて、その場にへ垂れ込み、
そのまま床に置いてあった少女まんがを読んだ。

「不安になったら、少女まんがを読むといいのよ」
そう旧友はいっていた。
けれど、一向に晴れない感情の起伏に耐え切れず、
そのコップを悲鳴と共に右手で振り払った。
ユニットバスの小さな浴槽の中に、
離れ離れになった歯ブラシが飛び散った。

何が気に食わないのだろう。
何が私をこれほど苛立たせているのだろう。
何が私をこれほど駆り立てるのだろう。

トイレから出た私は、小箱の1番上の引き出しに手を掛けた。
中からはさみを手に取り、再びシェルフの前に行く。

男が、
「これは一式置いて行くから、洗ってアイロンをかけておいて」
そういったワイシャツの襟を、きれいに裁ち落とす。
次に、男の滑らかな少し反り気味の親指を思い出し、
袖をきれいに切り取った。
そして次に、私が男の身体の中で最も好きな背中を切り落とした。
そうしてようやく、落ち着きを取り戻し、
最後に左胸の上部を切り取り、自分の左胸に重ねた。

我に返りもし今度、男が来たときに
「あれ、Yシャツは?」
と聞かれたとき窮せぬよう、Yシャツを買いに行った。
「あのYシャツは?」
と聞かれたら、
「趣味じゃなかったの」
そう答えようと決めた。

窓の外を、救急車が走り去り、少しばかりの笑みを浮かべて、
再びシェルフに真新しいYシャツを何枚も並べ、眺めた。
満たされた私が、そこにいた。
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[2007/08/25 23:48 ] | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0)
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