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メトロ
後楽園に、行きたいわけではなかった。
行かなければ、ならなかった。

押し寄せる思い出の数に押しつぶされそうになりながら、
約束の時間より30分も早く着いてしまったことを、心底後悔した。

後楽園は、遊びに来るものと思っていたが、
今日はとてもそんな気にもなれなかったし、
そもそもで遊びに来たわけでもなかった。

3時間後、アポイントも無事に終了し、南北線に乗る。
白金高輪行き。
南北線はいつも、なかなか電車が来ない。
そもそも、本数も少ないのだが、
なぜか後楽園だけは他のどの駅よりも待たされる気がした。
ようやく来たガラガラの電車に乗り込む。
崩れるように座席に座り、空を仰ぐ。

(広告、入ってないなー)

以前、誰かが同じことを同じようにいったと思うが、
それが誰なのかは思い出せなかった。
昨日買ったばかりの東野圭吾『さまよう刃』の文庫本を
買ったばかりの真っ青の鞄からいそいそと取り出す。
真新しいゆえか、心地よい革の匂いと少し固すぎる感覚が、
疲れきった私を、少し、励ました。

これから先をぼんやり考える。
何となく見えたその道に、
「もう一般人には戻れないよ」
というS氏のことばが脳裏に蘇った瞬間のことだった。

キィーーーッン

地下鉄独特の音が耳を突き抜けた。
その音はすぐには止まず、咄嗟に回りを見渡したが、
誰も動揺なぞしてはいなかった。
あいにく、今日はiPodを大音量では聞いていなかったのだ。



「迷うな、行け」



誰かも分からない、どこからかも分からない。
その強烈な高音の中で、ただ、はっきりと聴こえた。

電車は溜池山王に着き、ようやく私は少し落ち着きを取り戻した。
後楽園の駅を出てから、ものすごく時間が経っている気がした。

白金高輪で乗り換える。
強烈なめまいと頭痛が襲ってきた。
出口に近いところに立ち、ガラス扉に映る疲れた自分を見る。

(あなたも、年をとったわね)

こころの中で、軽くつぶやいた。
電車は白金台を出て、間もなく目黒に着こうとしていた。



「南北線で後楽園から帰れば1本で帰れるぢゃない」
「JRで水道橋から代々木乗換えで帰ってきたほうが早いんだよ」

いまは過去となったかつての会話の一部が切り取られて、
頭の中で鮮やかに再生された。
もはや、涙も出なくなったのになぜか、胸だけが少し痛み、
小走りに家路を急いだ。
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[2008/07/04 23:18 ] | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0)
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