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夏。
不思議だ。



あれほど涙して別れたその人が、いま、目の前で丼を掻き込んでいる。

「ねぇ、出会ってもう1年半経つのよ」っていうと、
返事なく頭だけ大きく上下に振って私に応えた。

「あなたを迎えに平日なのにさ、羽田空港まで朝から迎えに行ったこともあったよね」
「それだけオレが魅力的やってことやろ」
その一言に手に持っていた割り箸を鼻の穴に突っ込んでやろうかと思ったが、
周りの目が気になったので、かわりに思いきり舌打ちをした。



「最後の1枚、食ってまいや」といって、ぺらぺらの牛タンに男は目をやった。

「あんた、いらんの?」
「オレは米があるからえぇ。米はただやからな」
あまりにストレートなその回答に思わず吹き出してしまった。

食事を終えてタバコに火を付ける。
その手元を眺めながら、「なぁ・・・」と声をかけた。
男は返事をせず、視線だけこちらに寄越した。
「あんたは、うちのこと、見捨てんといてな」という私に、
男は軽く俯き、タバコをくしゃっと灰皿に押し付けた。

「見捨ててへんやろ」少しだけ真顔でそう答えた。
駅に向かう帰り道、ふたりの距離は自然に縮まっていた。

「ふたりになるとかわいらしいのになぁ」
いわれたと同時に右手で男の肩を強く叩いた。

「あほちゃう?! 何をいいよんねんな」
「・・・そうか、照れてんのか。照れんでええのに」


なんだかんだ、この人はよく私を分かっている。


「夏、やなあ」

「せやなぁ」


そんな他愛ないやりとりをしながら、私たちは別々の家に帰り、
また明日を迎える支度を始めた。気付けば明日は8月、夏は半分過ぎ去っていた。
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[2008/07/31 22:48 ] | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0)
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