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しばらく見えなかった山道に、信号が見える。
そこが入口だ。
ゲートの奥には、暗く、長いトンネルがあり、そこを抜けていくつかの大きなカーブを曲がる。
最後の右カーブを曲がると、目の前に琥珀色の大正池と、
その奥に悠然と佇む奥穂高が見える。
新雪僅かに残し、薄化粧をした様は、まるで旦那の帰りを待っていた新婚主婦にも似ている。

「はい、上高地到着です。こちら、大正池で下りられる方、ここで下りていただきます」
私はここでは下りない。
その少し上の帝国ホテル前で下りるが常である。

赤いトタン屋根の帝国ホテル前で右足を引きずりながらバスを下りる。
もう何週間も前から右膝は階段を上下すると痛みが走る。
dscn0133.jpg
ドアマンが「いらっしゃいませ」と迎え、中へ入ると、そこは大正モダンの世界が待っている。

「コイツァよくできてんなぁ」
「だろ? 」
私はその相手に微笑みかける。
「茶でもしてくか?」
「お金ないぢゃない。次の五千尺ホテルでケーキセット食べよう」
そういって、私は、このホテルのパンフレットを2部、リュックに入れて河童橋へ向かう。

先日山開きだったせいもあり、かなりの人入りだ。
もう来慣れたといってもよい五千尺ホテルの喫茶店に入る。

「いつも、おとうちゃんは洋ナシのタルトとコーヒー頼むんやけど、
私はチョコレートケーキとミルクティー」
やってきた通常の2倍はある大きなケーキをちらと見て、
「よくオメェはよう、クックック、ンナもんばっかり食えンなぁ」
と笑いながら、
「一口くれや」
という。
「やっぱり欲しいんでしょ」
と鼻高々にその一口をくれてやる。

この五千尺から私たちの上高地は始まる。

河童橋の正面に奥穂高、明神岳を望み、振り返るととんがり帽子のような焼岳が
夏の訪れを教えてくれる。

次のポイント、明神池へ向かう。
「これ、右から行くのか、左から行くのか?」
明神池は、梓川という川を挟んで、右からでも左からでも行ける。
「左岸から行くよ。左岸が絶対、気に行ってもらえるから」
「おう。ぢゃ、行くぞ」

photo.jpg

「見て。きれいでしょ。
上高地は河童橋とか明神池とかポイントはいくつかあるけれど、
本当にきれいなのはその合い間にあるこういうところなんだよ」
「あれ、岩魚ぢゃねぇか。でっかいぞ、おい。
おい、ユナ、オメェちょっとあれ取ってこいよ」
そういって右の口端を少し上げながら笑っていた。

そのまましばらく進む。
車の音も、電車の音も、電子音も何もしない。
ただ、木立が風にそよぐ音と、川の音、鳥の鳴き声だけのポイントに着く。
「オメェ、あれ歌ってくれよ」
「風の通り道?」
「あれ、好きなんだよ」



歌い終わって振り返ると、そこにオニィの姿はなかった。

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[2009/05/24 10:03 ] | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0)
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