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悲しい結末
大嫌いな上司がいた。
本当に嫌いだった。

当時在籍していた会社の新規事業に参加することになった私とその上司。
毎日、抗っていた。

新規事業にえらく肩入れしていた上司と、
右も左も分からないのに何でもできると勘違いしていた私。
当然、全くかみ合わない日々が続く。
その上司の苛立ちは、やがてパワハラへと変わった。

そのうち私はノイローゼになり、
私が転属した1週間後、その上司は総務部へと異動になった。

めぐりめぐって、1年が経ち、
私も総務部へと異動となり、何の因果かまたその上司の下に着くことになった。
その時、同社は上場に向け、何もかもが変わっていった。
雰囲気も、監視も、すべてが厳しくなった。
ただ、一部の経営層だけが、上場は社員のためだ、と自己満足気に語っていたのを記憶している。
上長は、上場に関するプロジェクトのリーダーとなり、私はその補佐となった。
1年が経っても、やっぱり私はその上司が嫌いで嫌いで仕方がなかった。
ただ、「ケンカ」ができるようにはなった。
そのうち、お互いに笑えるようにはなったが、決して関係がよくなったわけではなかった。
私は、相変わらずかわいくない部下のままだった。

その後私はその会社を退職、上司は間もなく子会社へ出向となった。
退職後に知ったことだが、その上司はかなり私を擁護してくれていた。
謝りたかったが、その術がなかった。
退社して半年後、私は上司の出向先に連絡を入れる。

「ご無沙汰しています。転職しました」

やはりまだ、ぎこちなかった。
電話越しに元上司が、
「飲みに行くか」
といい、私は素直にそれに従った。

久しぶりに会った上司は、随分早くに待ち合わせ場所に着いていたらしかった。
右足を少し前に出して人を待つ時は、
決まって10分以上相手を待つ時の上司の癖だと、私は覚えていた。
「いま来たところだよ」
上司はいささか緊張していた。
私も、緊張していた。
でも、いま目の前に居る上司の顔は、仏のように穏やかになっていた。
「あの会社を出てね、大きく息が吸えるようになったんだ」
私は、苦笑い混じりに、
「皮肉ですよね。あんなに近くにいたのにこんな話、1度もできやしなかった」
というと、
「そうだな。1度も、オマエと向き合ってこなった」
上司はうつむき加減にそういった。

一言、私は
「ほんと、かわいくない部下でした。すみません」
そういうと、上司もまた、
「こちらこそ、すまなかった」
そういって、光る頭を私に見せた。
3年越しの「ごめんなさい」だった。

それから趣味の話、夢の話、散々語った。
話も途切れ、空いたグラスで遊びながら、
「何だか、私たちは上場という会社のプロジェクトの中で、
 押しつぶされた感じがしますね。あなたはいつも苛立っていた。
 とばっちりは私に来た笑」
「そうだよな、すまん」
「いやいや、上長もまた、他のどこかから私で理解できないほどの重圧を感じていた。
 結局、私たちはあんなにしんどい思いをして、時期早々に上場までして、
 株価は下がりまくるし、いったい、何がよかったんでしょうね」
「分からんな。ただ、俺たちはあの会社を出て正解だった。
 いま、それしかもう、ことばが出てこないよ」
「時間ってのはすごいですね。正直、ほんと上長、嫌いだったもん」
「そんなにか?!」
「そんなにですよ(笑) でもいまは、こうやって飲んでる」
「一つだけ、忘れないでほしいことがあるんだ」
「何ですか?」
「オマエはすぐ、自分を責めるから。だけど今日から俺はキミの味方だ。
 味方っていうのは、いつ、どんなときでも、必ず味方なんだよ」
「上長、あの上場っていうある種のバカ騒ぎの中で、みんな麻痺っちゃったんすよね。
 でも、いま、ここでこうやって上長と飲んでる。それが現実なんですよね」

上場騒ぎの中で、何かが狂っていた。
私たちはその波に流されながら、時にぶつかって、行く先さえも見失いながら、
ようやく一つの岸につけたのだと、その時悟った。

以来、上司とは定期的に連絡を取り合っている。
来月にはその上司と山へ登る約束もしている。
出会い方が違っていたならば、一緒におもしろい仕事もできたのかもしれない。
私たちは、悲しい結末を迎えたけれど、またここから、新しい関係を築くことができた。
企業は、時としてその人の人生さえも押しつぶしながら前に進む。
一人が押しつぶされたら他の違う人が、今度は押しつぶされる。
その連鎖を繰り返しながら、企業は大きくなっていく。
私たちは、その押しつぶされた中の一人に過ぎない。
今日もどこかでまた、企業に押しつぶされる人の悲鳴が聞こえてくるような気がする。


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[2009/06/12 14:41 ] | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0)
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