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【帰省3】 工業地帯に人居らず
昔から商人の町といえば堺だった。
堺港には各地の商人が集まり、大変盛況な町だったという。

千利休、刃物で有名なその土地に私は生れ、
たいしてそんな知識もなく、そんな土地とも知らないまま、私は上京した。

「堺はお菓子が有名な町やねんで」
と宇治のしずかおばちゃんにいわれたときは、
あんな寂れた町で何があんねん、と思っていたが、



あるのだ、菓子屋。

さて、その菓子屋の話は後ほどとし、
菓子屋が並ぶチンチン電車界隈よりちょっと先にある、
堺港の工業地帯の話が今回のメインディッシュである。

堺には、JR 阪和線、南海電車が通っている。
私の住む、JR 阪和線の堺市駅から堺港まで自転車で約30分。
5kmの道程をゆったりと自転車で走った。
肌がチリチリと音を立てているのではないかと思うほどの暑さに潮風が吹く。

市街を抜けると、一気に前が開けた。
嘗ての貿易港は、いまは工業地帯。
平日の日中にも関わらず、ゴウンゴウンという換気扇の音しかしない。

人は、いない。

大型トラックがあちこちに止まっていて、
そのトラックの運転手はみな、運転席で寝ていた。
やくざのようなオッサンと目が合う。

「ねーちゃん、何しよんねん」

オッサンが話しかけてきた。
海が見たいわけではなく、ただ、工業都市として栄えた堺の現状を見たかった。
とは、いえなかった。

「海見に来てん。昔よう浜寺とか南港のプールで泳いどったから」
「そうか。何もないやろ、ここ。オッチャンなんて仕事もないで」

少し、本気で、半分笑ってオッチャンはトラックに戻った。
5分くらい経ったころ、オッチャンがまたやってきた。

「さらやから、飲み。この暑さやったら倒れるで」

オッチャンは、ペットボトルのお茶をくれた。

「おっちゃん、ありがとう」
「どっから走ってきたんや」
「堺市駅から」
「市駅から来たんかいな」
「ほんまはもっと遠いで。住んでるのは東京やから。
 いまはこっちに帰ってきてるだけ。また日曜に東京帰んねん」
「東京から来たんか。そうやなぁ。女の子一人で昼間にこんなとこ来いひんもんな」
「バスで来てん」
「ほしたら今度帰ってくるときはオッチャンのトラックにつんだるわな」
「ほんま? 交通費浮くから助かるわ」
「仕事がなぁ、あったらええのになぁ。かなわんで」

そういって、オッチャンはまた、笑った。

「なぁオッチャン、トラック乗せてぇや」
「ええで。ほんならチャリンコ、横によけとき。他のトラック来たら邪魔になるから」

オッチャンは、矢沢永吉をBGM に、港の近くを軽く走ってくれた。
荷物を積んでいない大きなトラック、ひとりでは助手席に乗れないくらい大きなそのトラックに、
必ずまた乗らせてもらうと約束した。

岸の向こうにSHARP の工場が見える。
そこだけが、唯一工場と呼べる場所だった。
その工場を見ながらタバコをふかすオッチャンの顔を、私は忘れない。

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[2009/08/16 14:32 ] | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0)
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